戦略的無能症(Strategic Incompetence Syndrome)


■ 病名

戦略的無能症(SIS)


■ 概要

戦略的無能症とは、
能力の欠如ではなく、「できない」と主張すること自体を戦略として選択する行動様式である。
個人の保身行動として発症するが、組織内で黙認・強化されることで組織病へと進行する。

本症は一見すると「無能の集団」に見えるが、実態は

責任回避・負荷転嫁・評価操作を目的とした合理的選択の集合体
である点に特徴がある。


■ 初期症状(個体レベル)

  • 「できません」「分かりません」「前例がありません」を多用

  • 判断・決断を極端に避ける

  • 失敗を恐れているように見えるが、実際は
    成功した場合に発生する責任を恐れている

  • 周囲に「助けてもらう前提」で業務を構成

※ 注意点
本人は自覚的に「無能」を演じている場合が多く、
知的能力や経験年数とは必ずしも相関しない


■ 進行段階(組織病化)

第1段階:善意搾取フェーズ

  • 「お人よし」「責任感の強い人」がフォローに回る

  • 無能を装う側は評価を落とさず、
    代替作業者だけが疲弊する

第2段階:役割固定フェーズ

  • 「できない人」は“できない役”として温存される

  • 「できる人」は“何とかする役”に固定される

  • 組織はこの状態を安定と誤認する

第3段階:錯覚反転フェーズ(猿の惑星化)

ここで重大な認知の歪みが発生する。

  • フォローする側
    →「自分は有能だが、周囲は無能ばかり」

  • フォローされる側
    →「自分は問題ない。できないのは仕事が難しいから」

結果として、

無能が蔓延しているのではなく、
無能であることが合理的な環境が完成する


■ 誤診されやすい点(重要)

本症はしばしば以下と誤診される。

  • 人材不足

  • 教育不足

  • 世代間ギャップ

  • 能力差問題

しかし実態は違う。

これは能力の問題ではなく、
行動選択の問題である

教育しても改善しない理由は、
治す動機が本人にも組織にも存在しないからである。


■ 決定的所見

当初は
「猿の惑星(=理解不能な他者の集団)」
と認識されていた環境は、精査の結果、

猿ではなかった
戦略的無能が最適解として繁殖している会社だった

という結論に至る。

つまり、

  • 知能差による断絶ではない

  • 言語が通じないのでもない

  • 責任を取らない者が勝つ設計だった


■ 予後(結論)

  • 個人が努力しても改善しない

  • 正論・熱意・献身は症状を悪化させる

  • 改善策は以下のいずれかのみ

  1. 責任と権限を完全に一致させる構造改革

  2. 距離を取り、エネルギー投入を最小化する撤退戦略

多くの症例では②が選択される。


■ 総括

戦略的無能症は、
最も合理的に振る舞った人間だけが生き残る、静かな淘汰システムである。

そして気づいてしまった者は、

  • 怒り

  • 嘲笑

  • 最後に「孤独」

を経て、次の結論に辿り着く。

ここは治療対象ではない。
退出対象である。

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